尻の穴 総帥

2010年7月10日完成
1/12 Scale
全高 15.3cm

CDJ2010 より
『尻の穴 総帥』

いよいよこの方の登場です。
当初より作りたかったキャラクターです。

しかし、あまりにもすごいビジュアルの上、凝った衣装のせいで製作も延び延びになっていました。

そうは言いながら、他のキャラクター達がようやく形になり、一段落したのでいよいよ製作開始です。
(原型は既にデータを作成して切削していました。)

      

原型切削パーツの組み立てとバランス調整

総帥の衣装ですが、問題はグジャグジャの髪の毛と、銀糸の蜘蛛の巣だらけの模様の入ったマント、それに3体取り付けた蜘蛛のぬいぐるみ、更には赤い蜘蛛の杖の再現。
フィギュアにするにはあまりにも厄介な問題山積です。
親びんこと、カリスマ スタイリスト小松さんの真髄発揮とも言うべき、とんでもない格好なのです。
過去に作ったフィギュアの様に、彫刻と塗装だけではどうしたって再現不可能なのは明らか。

なにしろ、唯でさえグジャグジャの大泉さんの髪の毛が、更に付け毛でグジャグジャになって帽子の下から覘いているし、紫地色のマントには銀糸の蜘蛛の巣がこれでもかといわんばかりに刺繍されているし、合わせて3体の蜘蛛のぬいぐるみはこれも結構手が込んだ仕上げで背中には蜘蛛の巣が刺繍されています。
よく見ると帽子も、レザータイプのレーザーラモンの被っている様な帽子で、上には蜘蛛の巣の飾りが付いている。
どれだけ凝った造りなのやら…。

まず、芯となる胴体ですが、上着は旧ドイツ軍兵士のヤッケのデータがあったのを基に切削し、そのフードの部分を削り落とし、下半身はぴっちりしたズボンに長靴の組み合わせのデータを作っていつもの様にMODELAで切削しました。
上着はダブルの旧ドイツ軍の武装親衛隊の制服調で、しかも少々ややっこしい形のベルトを巻いています。
このベルト、ゴールドでしかも全周に渡って鋲が打ってあります。
そこで、製作に当たってはビニールテープを幅切りして、その上に1mm径のポンチで抜いたビニールテープを貼り付けていきました。
バックルはベルト穴式なので、0.5mm真鍮線を折り曲げてバックルらしく作りました。

  

各部のバランス調整 ベルトとバックルの製作

顔、手はいつもどおりMODELAで切削です。

さて帽子ですが、これは形が似通っているアメリカの警官の帽子が見つかったので、このデータを手に入れてMODELAで切削加工。
頭の入る部分は削り込んで、一度 中にマスキングテープを貼ってからポリパテを塗りつけた頭を差し込んで固め、取り外して整形します。

帽子のエンブレムはいろいろ悩んだ末、輪郭だけ作っておいてデカール処理する事にしました。
作りこんだ方が良いのは判っているのですが、とてもこれだけ小さなものを作った上で塗り分けるのは無理だと判断したからです。
なにしろエンブレムのサイズは縦6.5mm、幅5mm程度しかなく、しかも、蜘蛛の巣の上にエンブレムが乗っかっている様な凝った図案なのです。

次にマント。
これは紫色の服の裏地にアルプスMDプリンターで作った銀色の蜘蛛の巣パターンをアイロンプリントする計画を立てました。
そして、布地を切り出して文字通りマントに仕立てる計画です。
蜘蛛の巣のパターンをCADで作って、それを加工して、パターンを散りばめて、いざ印刷。
紙用シルバー単色で、試しに紙に印刷をしていたところ、事件は起こりました。


「バシッ!」


いきなりプリンターにエラーがかかり…


最初は紙が噛み込んだかなと疑ってカバーを開いてみてみました。

するとインクリボンのカセットが引っ掛かっています。
更によく見るとインクリボンが切れています。
もったいないけど仕方ない。
そう思ってインクリボンを取り除きました。

新しいインクリボンに交換して、いざ印刷再開。


ところが・・・


やはりエラー。



「えっ、何!?」


何度電源を入れ直してみても、パソコンを再起動してみてもどうやっても息を吹き返しません。

プリンター故障?

大慌てで調べたところ、何やらバネの様なパーツが転がり出てきました。

「遂に壊れたか…。」

「仕方ない、予備のプリンターを使うか。」

こんな時の為に、父から返してもらったプリンターを予備機として置いていたのですが・・・。

「ん!」

「ん!??」

「動かない・・・」

「・・・・・・」

「こっちも故障!!」

見ると同じ部品が外れてプリンターの中に転がっています。


「おい、おい、おい、おい!」


このプリンターじゃないとデカール印刷出来ないのに…。


インクジェットのデカールは・・・

必要なのはシルバー印刷!

「絶対ムリ!」

調べたところ、メーカーのアルプスはプリンター事業から撤退し、後継機種のMD-5500も既に販売中止!

しかも、先月末・・・!?

数日前じゃん!

メーカーに問い合わせしてみたけれど、やはり「申し訳ありません。」のひと言。


どうしよう、

これないと完成できない・・・


慌ててオークションで手に入れようかと中古プリンターを調べていたら、こんなものを見つけました。

『象のロケット』!?

アルプスプリンターの修理を手掛けてくれる様です。

わらにもすがる思いで、症状を書いたメールを送って見積りを依頼したところ、実に懇切丁寧にMDプリンター修理についての詳しい見積り兼アドバイスをメールで頂きました。

メールを読んでいて、このアルプスプリンターに対する『象のロケット』さんの深い愛情というか熱意が伝わってきて、胸が一杯になりました。

先日古いMINOLTA XD7の修理をしてもらったMOTしかり、メーカーが既に修理を放棄した製品を愛して使うユーザーが未だ存在しているのと同時に、そうした古い機械を大事にメンテナンス出来る会社がある事に驚きました。
日本もまだまだ捨てたもんじゃない・・・。

買い替えを前提にした商品を出しているメーカーにとっては大変迷惑な話でしょうが、大切な機械を売りっぱなしで使い捨てにする文化そのものに疑問を持っていたので大いに利用したいと思います。

さて、修理なって帰ってきたプリンターを使用して早速データを印刷。
満足いく仕上がりです。

蜘蛛の巣のマントはアイロンプリントシートにシルバー印刷し、それを服の裏地にアイロン溶着しました。

実は…


そもそもアイロンプリントはTシャツなどにプリントするもので、布地の材質が限られます。

また、使用できる色もシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックだけなのです。

基本的にコットン地か、せいぜい混紡生地までなので、服の裏地に使われる化繊生地では無理なのです。

それが判ったのは製作開始後。

しかし、これしか方法は無い。

考えた結果、


本来、コットン生地溶着用なので、アイロンの温度設定は高温なのですが、それを中温にまで落とし、シルバー印刷したアイロンシートを裏地に溶着してみました。
一歩間違えれば生地が溶け出してえらい事になるけれど・・・。
規格外のシルバー印刷もどうなる事やら・・・

結果は・・・

女房に挑戦してもらってどうやら成功。

少しごわつきますが綺麗に溶着できました。
これであのすごい意匠のマントの生地の出来上がり。
後はこれを切り出してマントの形にするだけです。

  

完成したマントの材料

レジン成形したパーツを下地処理してから塗装開始。

今回は胴体、脚部、両手、頭部、帽子などのパーツに分けていますが、実際大変だったのは蜘蛛の杖でした。

何しろ、全体像が写っている映像が無いのでVTRを何度も見直し、全体形を把握してそれなりに形を整えました。
一応これで正解かなとは判断していますが、正直なところ自信満々とは行きません。

形が複雑な上に蜘蛛の脚が絡まっているので、脚をそれぞれ分割して、型抜き後組み立てる方法を採りました。
その為、蜘蛛の杖のパーツだけで5つになります。

    

蜘蛛の杖の製作 (左)形の判りそうな写真を集めて胴体を成型 (中)アルミパイプを曲げながら足の形に整えます (右)どうやら杖らしい形になりました

更にぬいぐるみの蜘蛛が3つ付くのでそれも別パーツ。
こちらも脚ごとの一体成形を計画しましたが、1mm太さの脚はレジンでは綺麗に抜けそうに無いのでこれは後から作りつける事にしました。

  

ぬいぐるみの蜘蛛の製作 プラ板を積層したものを加工して蜘蛛の胴体に

  

バランスを見ながらアルミ棒の蜘蛛の脚を取り付けていきます。
当初はこれも一体成型の予定でしたが組み合わせが難しいと考えて断念。
一本一本蜘蛛の脚を作りつける事になりました。

    

完成した原型 ぬいぐるみの蜘蛛の脚はバランスを考えて当初より伸ばしました

蜘蛛の杖は変形が嫌だったので、床にまで伸びているメインの脚の中には1mm径のアルミ棒を入れて、レジン成形しました。
ただこれは真っ直ぐではなく曲がっているので、ひとつひとつ曲げ成形をした上でシリコンゴム型に入れてキャスティングする必要があります。
少数しか作らないので、冶具を作る訳でもなく、その為たった5つ作るだけでも大変な作業です。
とにかく出来上がったレジンの杖のパーツを組み合わせてみると、蜘蛛の杖の出来上がり。
塗装は全体像が把握できなくてかなりの部分が想像に近いのですが、塗りあがってみると
その出来栄えは予想以上で感動的でした。

    

複製品の組み立て 塗装は試行錯誤の連続

帽子、上着、ズボン、ブーツはいずれも黒なので、全てまとめてラッカー塗装です。
最初半つや消しの黒で全て塗ったのですが、帽子、上着、ズボンは良いとしても、ブーツまで同じじゃおかしいんじゃないの?と女房から意見があり、考えた結果、ブーツのみ艶ありの塗装に変えました。
さすがにいい感じになりました。

    

塗装 顔を塗っていないから不気味

ベルト、上着のボタンは金色に塗装し、いよいよデカール処理の出番です。

まずは帽子。

蜘蛛の巣のデカールを貼り付け、マークセッターで馴染ませます。
実際かなり頭頂部は盛り上がっているのでマークセッターなしには定着は難しそう・・・。

いよいよマントのセットです。
左肩口の蜘蛛のぬいぐるみの位置から背中を回してうまく皺が広がる様に注意しながらクリアーボンドで接着していきます。
この皺の入り具合が結構微妙でした。

実際、アイロンプリントを施した服の裏地は硬くなってしまって、プラフィルムの様になっていたので一度揉み解して貼り付けていきました。
これでようやく質感が増しました。

左の肩口、右脚、そして蜘蛛の杖には蜘蛛のぬいぐるみが着きますので、そのぬいぐるみの蜘蛛を製作。
胴体だけはレジンキャスティングしてあるので、脚は1mmのアルミ棒を変形し、適当な形にまげて取り付けます。
そして胴体にシルバーデカールの蜘蛛の巣を貼り付けて出来上がり。
これを左の肩口、右脚、蜘蛛の杖に取り付けます。
特に左の肩口のものはマントの留め具の様に取り付けます。

    

ぬいぐるみの蜘蛛ひとつひとつ脚を手作りして 塗装デカール貼り 完成

そして、いよいよお顔。

映像では、髭を書き込んでいますが、ステージでは無かったので、一応ステージバージョンと言う事で髭なしで塗装です。
目元は大きなサングラスで隠れるので、実際適当にしか書き込んでいません。

      

顔の塗装とモジャモジャ着け毛

サングラスは透明なプラスチックシートをサングラスの形を印刷したデカールを貼り付けて切り出して、黒く塗り、0.5mm真鍮棒を接着して顔に取り付けました。

そして、モジャモジャの髪の毛ですが、脱脂綿を適当に接着し、それにスプレー塗装した上で少しほぐす様にして繊維を抜き取りました。

全てのパーツが組みあがり、完成してみると・・・

何なんでしょうこの存在感。



かっこいい悪の首領。

尻の穴の総帥が遂に姿を現しました。


出来上がりには大満足です。


CDJ2010にかこつけて札幌に行きましたが、総帥様にもご同行願いました。
そしてちょっとバカバカしい事に挑戦してみました。
お楽しみ頂ければ幸いです。

尻の穴 総帥の札幌征服記はこちら




注)これ等、フィギュアは個人的な趣味で製作したものです。

版権は当然ながらクリエイティブ・オフィス・キューに所属します。

ですから、双熊堂本舗、及び、クリエイティブ・オフィス・キューに問い合わせはしないでくださいね。

お願いします。


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