F1マシンの写り具合について

 

 F1マシンはサーキットを疾走してこそ魅力のあるもの。その為、極力、自然光を使って撮影する事を基本にしています。
ただし、撮影しはじめた頃、モータショー等のマシン展示ではスポットライトを当ててマシンを浮き上がらせる展示が多く、ストロボを使用する機会が多かったのは確かです。
その為、初期の撮影分はその全てががストロボ撮影と言うものもありました。そうしているうちに判って来たのですが、マシンを肉眼で見る場合と、写真に写した場合では、時に大きな差が生じる事がありました。それは特にカーボン製のマシンに多かったのです。

 友人は「カーボンシャーシのマシンはつまらん。真っ黒だから。」と言っておりました。模型栄えしないのだと。
しかし、実際マシンを近くで眺めてみるとまったく違います。
使用している材料(カーボンファイバー単体か、カーボン+ケブラー複合材か)で母材の色は異なりますし、またカーボン材を定着させている樹脂材料によってもその色が異なります。

 1981年マクラーレンMP4とロータス87/88でスタートしたカーボンファイバー(CARP)モノコックボディは瞬く間にF1界に広がりました。強靭で軽いCARPはF1マシンと切っても切れない存在となりました。ただし当時のマシンと現在のマシンを比べると、同じCARPを使用していても、その使い方は変化してきています。
 当初のマクラーレンMP4やロータス87/88では、いずれもオス型成形法と言う方法で、型の外側にカーボンファイバーのシートを貼り付けてゆき、ボディの形を作ってゆくというやり方でした。その為、モノコック表面は意外と凸凹していて、その滑らかなボディーラインを作り上げるには別体式のカウルが必要でした。そもそもこのやり方は、当時のアルミ製モノコックと変わらず、モノコックの素材をアルミからCARPに変更したと考えた方がしっくりきます。
 その為、現在の様にカーボン素材はクロス状に編みこんだ物ではなく、カーボン素材を一定方向に並べたスダレ状のシートを重ね合わせ成形してゆき、そのシートの重ね合わせた枚数と方向を変える事で、最終的に出来上がったものの強度を調整するというかなり自由度の大きい方式でした。マクラーレンでは1991年のマクラーレン・ホンダMP4/6までこの方式を続けていました。
 大きく変わったのは、1983年グスタフ・ブルナー デザインのATS D6で、初めてメス型成形という方法がとられました。これはボディ形状の型を作ってその内側にカーボンクロスを貼って成形すると言うもので、出来上がったモノコックはそのままボディ外形として使えます。ただし、空力処理の為、ボディ形状を変えるといった場合には、モノコックそのものを作り直さねばならなくなりました。
 カーボンのスダレ状シートから、カーボンを編み込んだクロスに変更されたのはおそらくこの頃と推測しています。
 現在のマシンはほぼ、カーボン主材のクロスで作られている様です。

 不思議な事に、自然光撮影した場合とストロボ撮影をした場合とでは、カーボン、もしくはケブラーの反射が異なる為にかなり印象が異なるのです。

    

 上の写真はいづれも同じマシンを撮影したものですが、左がストロボ使用、右は未使用です。ストロボ光源の場合、カーボンクロスのパターンが非常に鮮明になっているのが判ります。ストロボの使用は、カーボンの構造を見るのには良いのですが、屋外を走行するF1マシンの場合、模型にした場合、果たしてそこまでカーボンのパターンが明確になるかは疑問です。だから、何が何でもカーボン地の個所にカーボンデカールを貼ると言うのも考え物と言う意見があるのも一理あります。
 
また、ストロボの安易な使用は、物体の距離感をなくす事があり、また、強力な影の部分を作ってしまう事から、本当に見たいものが写っていないなんて事になりがちです。
ストロボの使用を極力控えているのは主に上記の理由によります。
 
人物を写す場合でも、ストロボの使用方法は気をつけないと、肌荒れや、にきび、しみの発見につながる事があるので、ご注意を。


前のページに戻る

前のページに戻る(会員)

トップページに戻る